ひとりひとりに合った音楽を提供したい

2014-11-16

てぃん

Profile

早稲田大学大学院
先進理工学研究科 物理学及応用物理学専攻
増田 太郎さん

取材日:2014/08/15
編集者:藤原綾依

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研究内容

――― 現在行っている研究について教えてください

「機械学習」という分野で、ユーザーの趣味や好みをコンピューターが学んでいき、どんどん賢くなるという研究領域です。その中でも音楽が専門で、たとえば曲を検索したいと思ったときに、普通はアーティスト名や曲名を入力しないといけませんよね。しかし、そういった文字の情報を知らなくても、曲のフレーズの一部だけ(音)で検索することができると便利ですよね。また、ある曲の一部のフレーズを入れると,似たフレーズを持つ別の曲まで推薦することができたら、従来の「ジャンル」などとは違う観点から似た曲を探すことができます。

つまり,今までは実現出来なかった検索を通じて,リスナーは次々に音楽の興味の幅を広げていくことができます。この研究によりリスナーの曲の探し方が変わると考えると、一人の音楽ファンとしてとてもわくわくします。

増田さん

昔から音楽が好きで、聴くジャンルとしてはロックが一番多いですが、それに限らず久石譲だったりジャズだったりも聴きます。

人の好みをどうにか計算機で定量的に学習できないかな、ということに興味があるんです。ユーザーの購入履歴などの単純なデータではなく、音楽の「内容」に着目すれば、ジャンルは違ってもコードの進行やフレーズが似ている曲を推薦できますし、曲そのものの特徴をベースに好みを学習することに繋がります。

――― 学部生の時からそういった研究をされていたのですか?

実は違うんです。学部4年で卒業論文が終わってすぐ、1ヶ月間修行のように筑波に泊まり込んで,産総研(産業技術総合研究所)との共同研究をスタートさせました。そうして始めた新しい研究が、今の研究に繋がっています。学部時代は動画像処理の研究をしていました

――― 動画像処理とはどのような研究なのですか?

例えば、ニコニコ動画に登場する初音ミクなどのキャラクターには、本物の人間のようなリアルな顔だったり、デフォルメされた顔だったりと、同じキャラクターでも顔の作風にバリエーションがありますよね。その顔領域を取って、作風がどうなっているかを画像処理を使って見分けるんです。そうすれば,「こんな作風が好きな人なら,似た作風のこれも好きだろう」といったふうに,別の動画を次々に推薦することができます。動画を見る人の支援技術ですね。

学部時代は音楽についての研究は全くしておらず,研究室にも音楽の研究が分かる人はほとんどいなかったので,テーマを変えることは少し不安でした。ですが、共同研究先には音に詳しい人が多かったので,いろいろ教わりながら何とかこなすことができました。共同研究というコネクションがあるのは恵まれていると思います。

――― 個人個人に適したものを提供する、ということをやっているのですね

ユーザーの好みを学習する、ということにすごく興味があります。AmazonやYahoo!もその技術を使っていて、ページの閲覧履歴などからユーザーの好みを予測することができるんです。

早稲田大学大学院

――― どのようにしてこの分野を選んだのですか?

高校の頃から勉強自体は好きで、化学にも物理にも関心はありましたし、純粋な数学について考えるのもいいなと思っていました。迷ってしまう性格なので、行きたい学部がたくさんありました.

そこで,まず東京大学の理科一類に入ってから自分の専門をじっくり考えたいと思い、第一志望は東京大学にしていました。

――― この分野をやりたくて大学を選んだわけではないのですね

(早稲田の応用物理学科について)応用物理という分野よりもむしろ、研究室の選択肢が多いところに魅力を感じて受験しました。うちみたいに情報系の研究室もありますし、物理の力を使って生物の謎を解明していく研究室もあります。

応用物理学科から進める研究室は30個以上もあるので、それだけあれば自分の琴線に触れる研究室が見つかるのではないかと思います。早稲田の理工学部は学科の数も多いので、組み合わせとしては本当にたくさんの選択肢があります。最終的に今の研究室に決めたのは、30個以上ある全ての研究室を見た上で、一番興味を持ち続けられると思ったからです。

――― 大学に入るときに分野を決めていたわけではないのですね

全く決めていなかったですね。正直志望度が高い大学ではなかったですし、大学に入ってから自分のやりたい分野を決めたかったんです。その場その場でどうしたいか、という選択を迫られたときに、あまり先のことを考えすぎずに(自分の将来を決めすぎずに)今を一生懸命生きる、という生き方が好きなんです。

――― どの大学を志望していたのですか?

国立の前期試験は東京大学、後期試験は東京工業大学を受験しました。東京大学は理科一類を受け、東京工業大学については,当時電子デバイスに興味があったので(後述)、それに一番近い工学部第五類を受けました。私立大学は早稲田大学の応用物理学科だけです。もともとそんなに勉強が嫌いではなかったので、全部落ちたら浪人しようと思っていました。

――― どうして早稲田大学に進学を決めたのですか?

親の説得が大きかったですね。浪人するという手もありましたが、とりあえず通ってみてから決めればいい、と言われ、通い始めると思いの他楽しかったので、ここにずっといたいと思うようになりました。

早稲田大学大学院

――― 早稲田大学に進学してよかったと思うことはなんですか?

今まで体験し得なかったことをできたのはよかったと思います。サークルひとつ取っても、自ら指揮者に立候補してリーダー的存在になるなんて今までは考えられなかったですし、積極性を身につけられたと思います。高校生の頃はインドア派だったのに、外に出るのが好きになりましたね。

また、大学がお金を出してくれて研究発表で海外に行くなんてそんなエキサイティングな体験なかなかないと思うので、そういったことにはとても感謝しています。

早稲田大学ならでは,という点で言うと、大学内でいろいろな面白い人に会えるということですかね。学生数が非常に多いので、その分個性豊かな人が揃っていると思います。サークルや大学のイベントなどで新たな早大生と知り合うたびに、新鮮な刺激をもらえます。

あとは、私立大学の割に“金持ちの子”っぽい学生がほとんどいないので、すごく仲良くなりやすいです(笑)

――― 自分の進路選択に満足していますか?

結果オーライだと思います。入学当時は座学ばかりで物理ってそんなに面白くないな、と思っていたのですが、研究室が幅広かったおかげで今やっている音楽という興味のある分野に行き着けました。好きなことがやれたという意味で正解だったのではないかと思います。

理系に進んだ理由

――― 幼い頃から理系科目が好きだったのですか?

計算よりも「考えること」が好きな子供でした。図形の性質を考えたり、数独パズルなどをずっとやったりするのが好きで、ある1つの問いについて平気で何時間も考えていました。

父が理科の先生をやっていて、中高生の自由研究発表の場に連れていってもらったこともあり、自然と理科に触れる機会は多かったです。自由研究自体が特別好きだったわけではないので、内容は難しくて理解はできなかったのですが、理科を扱える人ってかっこいいな、と漠然と思っていました。

増田さん

――― 進路を考え始めたのはいつ頃ですか?

正直、中学生までは脳内お花畑で、「バンドで食べていこう!」と考えていたのですが、高校生になってからは、音楽以外で自分は何をやっているときが楽しいか、ということを現実的に考えるようになりました。数学が特に好きで、数理的思考を生かしてかっこいいものを作り出したい、と考えていました。

特に携帯電話にとても魅力を感じていて、通話、メール、インターネットなど、こんなに小さな機械にたくさんの機能が詰まっていることに感動したのを覚えています。それを軸に、最新のデバイスを作ってみたいな、という方向性を持っていました。建築などの動かないものよりも、動くデバイスに興味があって、自分でデバイスを触っていて「魔法みたいだな」ってわくわくしていたんですよね。そこから、みんなが触るものでよく使う身近なものを開発できたら、という想いが出てきました。

受験時代

田舎だったので塾には通っていませんでした。塾がない代わりに先生が丁寧に教えてくださる高校で、毎日のように課題が降り注いできていました。自分で計画を立てなくてもいいのは楽だったのですが、この範囲はもうわかっているのに課題をやらないといけない、ということもありそれは少し苦痛でしたね。自分で考えて学習計画を立てる方が将来のためになると思います。学校の勉強だけやるのか,それとも塾やZ会等を併用するのかは個人の自由だと思いますが、どれかひとつを極めた方が成長は早いと思います。

また、ちょうど当時ドラゴン桜ブームで、漫画を読んで自分も東大に行けるのではないかと考えていました。画期的な勉強法を知ったとかではなく、「東大も教科書を超えた範囲は出題しない」という事実が衝撃的で、それが目指すきっかけになりました。東京大学の入試は何を問われているのかすらわからない問題が出てくると思っていたので、そこで自分の中の「絶対無理だろう」というイメージが崩れたんです。

――― リフレッシュ方法はありますか?

やっぱり音楽好きだったので、家で音楽を聴いたり、好きなバンドのライブ映像を観たり、父が持っていたギターを弾いたり、3歳の頃からやっていたエレクトーンを弾いたり…。

文化祭ではバンドを組んで演奏して、それが1番の息抜きになっていました。あとは好きな女の子とメールのやり取りをしていました。モチベーションも上がりますし、高校生には恋愛も全力でやった方がいいよ、と伝えたいですね。長い目で見て後悔しないと思います。

キャンパスライフ

――― サークルなどの活動はされていますか?

ハーモニカを中心としたサークルに入っています。入学したての頃、高校の友達も周りにいませんし、物理の授業は難解ですし、少し辛かったのですが、サークルでの出会いが自分を変えてくれたと思います。ハーモニカを選ぶだけあってまったりした部員が多く波長が合うと感じたので、すぐに入部を決めました。

やっぱりなにか大学に楽しみがあると嫌な授業なども頑張れると思います。サークルに同じ学科の友達がいたので、一緒に勉強をしたり授業の情報を共有したりでき、その存在はとてもありがたかったです。自分の場合,大学生活において勉強以外に使うエネルギーはほぼ100%サークルに費やしていて、練習もほぼ全出席でした。もともと楽器の演奏も好きだったのに加え、サークルの雰囲気もすごく好きで,部室に行くたび癒されていました。

あれこれやるよりも、やりたいことを絞ってそれを極めたいと思っていたので、サークルと勉強を両立することだけは決めて、それに集中していました。力を入れたこと、と聞かれたらやっぱり勉強とサークルですね。

早稲田大学サークル

――― サークルで印象に残っている出来事はありますか?

色々ありすぎてひとつに絞れないのですが、たとえば他の大学とコラボして演奏会を開催したことは思い出深いですね。特に立教大学の人と仲良くなって今でも交流していますし、関西学院大学とコラボしたこともあります。なかなか他大学の人、とりわけ関西の大学生と出会うことはないのでとてもいい経験になりました。

――― 増田さんは理系+の運営メンバーですが、理系+に入って良かったことはありますか?

他の大学の理系の事情を聞けるのが新鮮でした。自分の研究室は厳しいところだと思っていましたが、大学院生ならこの生活が普通で、楽に生きている大学院生はいないんだなと思い知りました(笑)

論文の締め切り前は特にきつくて、ぎりぎりまで修正が終わらないとか、直前になって直さないといけないところが出てくるとか、深夜に教授からメールが来るとか…乗り越えれば乗り越えるほど強い人間になれた気がします。後輩の指導にも力を入れていて、論文を添削するのも大変です。自分も先輩に鍛えられてきたのでその恩返しをするというのが私の研究室の伝統ですかね。

――― 私の研究室の先輩にもそう思われていると思うと申し訳ないです(笑)

でもそのおかげで論文やプレゼンの技術が身に付きますから、積極的に学ぶ姿勢が大事だと思います。

高校生へのメッセージ

色々な大学生に会って話を聞いてみてほしいです。入学してみたらイメージとのギャップがあるかもしれませんし、高校生が見る大学生と、大学生が見る大学生には「ずれ」があると思うんです。大学生・大学生活の実態をもっと知ってから大学を選んでほしいですね。

自分が高校生の頃は引っ込み思案で話を聞きに行くことすらできなくて、聞いてみたいとは思いつつなかなか勇気が出なかったんです。これを読んでいる高校生の皆さんには,大学生の話を聞ける様々な機会を是非利用してほしいですね。

一人一人にあった音楽を提供したい

てぃん 理系コミュニティ理系+

情報系の学部4年生。理系コミュニティ理系+にてwebエンジニアとして活動中。趣味は映画鑑賞、パン屋さんめぐり、ミュージカル鑑賞。

@snoopypoint

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