理系+メルマガ 問題の回答「ウイルスの濃度(力価)とは?」

2015-02-25

ふみお

お待たせしました。
前回の研究紹介コーナーで出した問題の回答です。

ツイートで流そうかと考えていたのですが、読者の方のツイートで色々と書きたいことが増えてしまったので、コラムで書くことにしました。

問題(デデンッ)

『ウイルスの濃度(正確には力価)はどのような基準で測るでしょう?』

答え

『1つの感染細胞由来のプラークを作るウイルス最小量単位(Plaque Formation Unit)が、どれだけ一定量のウイルス液に含まれているか』

 

【解説】

twitterの”#理系メルマガ”では投稿ありがとうございました。

今回も鋭い回答があり、とても楽しませて頂きました。

さて、この問題を考える上で一番大事なことは、“ウイルスとは感染性を持つ物質” であるということです。
つまりいくらウイルス粒子があろうと、その粒子が感染性を持っていなければ、それはウイルスとして数えられないわけです。
(不活化したウイルスは当然ですが、感染能を失うほどの機能阻害を受けたウイルスもウイルスとされなくなりますね。)

そのためウイルスの力価は“1つの細胞に感染性を示すウイルスの最小量(unit)”がどれだけ存在するか、を指しています。

ここで2番目のポイントです。
1つの感染した細胞というのはどうやって数えればいいのでしょうか?

 

想像してみてください。下図のようなプレートに細胞のシートが張り付いているとします。

bdp-3510_large

http://www.medixcorp.com/catalog/CategoryDisplay.asp?category_id=126

この細胞シートにウイルス液をかけると細胞にウイルスが感染していきます。
ただ単純にかけただけだと、時間が経つにつれシャーレ中の細胞に感染します。

ウイルスに感染した細胞は、細胞変性(Cyto Pathic Effect, CPE)をして丸くなります。
そのため細胞変性をおこした細胞を数えていくことで、感染細胞を数えることができます。

ただ1つの細胞は顕微鏡でしか見れないほど小さく、それに対して細胞の数は膨大です。
そんな細胞集団の中から、顕微鏡でつかって細胞変性をおこしている細胞を探しだすのは骨が折れますね?

そこで考案されたのが「プラークアッセイ」です。

この手法では細胞シートにウイルスを感染させた後、上から寒天などを加え、数日待ちます。

この寒天を加える理由にはウイルスの2つの感染様式が関係しています。
一つは隣接した細胞に次々と感染する「cell to cell 感染」
もう一つはウイルス液から細胞に感染する「cell free 感染」

寒天を加えることで物理的に、感染細胞から放出されたウイルスがウイルス液を漂って、遠くの細胞に感染するのを防ぐ事ができます。

こうすることで、1つの細胞に感染したウイルスは隣接細胞にしか広がることができず、
初めに感染した細胞から同心円(たまに円じゃない)上に細胞変性した細胞が広がっていきます。
この広がった部分は周りと細胞の形が違うので白く見えたりして、プラーク(plaque)と呼ばれます。

このプラークを数えることでunit(感染能を発揮できるウイルス最小量)に感染した細胞がいくつあるか、というのが顕微鏡を使わずとも目視で確認できるようになります。

あとは簡単です。

ウイルス液のなかにどれだけプラークをつくるunit( Plaque Formaton Unit, PFU)があるか数えるには

ウイルス液を10倍位ずつ希釈していき、細胞にかけて、上から寒天をかぶせれば、
初めはプラークが多すぎて数え切れないが、いずれ数えられる量のプラークが形成されていき、そこからある量のウイルス液からPFUがどれだけあるかを算出します。

プラークアッセイの図はこんな感じですね。

プラークアッセイ

http://meddic.jp/%E3%82%A6%E3%82%A4%E3%83%AB%E3%82%B9%E3%83%97%E3%83%A9%E3%83%BC%E3%82%AF%E8%A9%A6%E9%A8%93

図だと1つのwell当たり、800ulのウイルス液をかけたとすれば、-6乗でプラークが2つなのでそのウイルスの力価は

2 � 10^6 / 0.8 ml = 2.5 � 10^6 (PFU/ml)
(原液1ml中に2.5×1000000個プラークを作れるunitが存在する。)

となるわけです。
(ちなみにmockとはウイルスを加えていないものでnegative control、つまり背景を揃えるためにおいてます。そして図のプラークアッセイは下手ですね。希釈とプラークの数があっていません…。)

 

どうですか、結構長くなってしまったのですがご理解頂けたでしょうか?

これは細胞に感染することを特徴としたウイルスならではの数え方ですね。

ではまた3月2日の理系メルマガで。
次回はコラム最終回として、ぼくが「なぜウイルス研究の道に進んだのか」
そして「ウイルスの医療応用」について触れていきます!

****************
ふみお (twitter : @eff_air_6)
理系+マーケティングチーム
理系+メルマガ編集長
都内某所でウイルス研究
好きなものはあたりめ
****************

 

(余談)
メルマガ読者の方のツイートで見たのですが、
菌にはColony Formation Unit(CFU)という単位があるらしいです。

菌は培地に上で自力で1つのコロニーを形成する最小量を単位とし、
ウイルスは1つの細胞に感染し、細胞変性をおこす最小量を単位とする、

自力で増えていく菌と細胞に感染し利用することで増えていくウイルスの違いがこんなところからも見られるのですね。

画像出典:https://goo.gl/6EhsoC

ふみお

ハードルは高ければ高いほどくぐりやすい。 ウイルス研究

@eff_air_6

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