熱帯魚の縞、砂浜の風紋

2013-08-20

シータ

こんにちは!今日は自然のあちこちで見られる「縞模様」の不思議について見ていきたいと思います。 皆さんの中には、縞模様の熱帯魚を見たことのある人もいるでしょう。
http://photoppi.com/s/%E3%82%BC%E3%83%96%E3%83%A9%E3%82%A8%E3%83%B3%E3%82%BC%E3%83%AB%E3%83%95%E3%82%A3%E3%83%83%E3%82%B7%E3%83%A5/より引用
上の写真 はエンゼルフィッシュという熱帯魚です。すごい縞模様ですね。しかも完全なストライプではなくて、一部途中で切れている縞もあったりして、かえって「後から書かれた縞」である雰囲気を醸し出しています。この縞模様は、では一体どうやって作られたのでしょうか? 「生物だから、きっと複雑なことが起きてこういう精巧な模様が出来ているに違いない」と思うかもしれません。でも、こういう縞模様は、実は生物以外にもさまざまなところに見られるのです。
「風紋」より引用
上の写真 は、九十九里浜の砂浜の風紋です。風紋というのは、砂の上を風が吹くことによって自然と出来上がる模様のことです。誰かが縞模様を引いていったわけではもちろんありません。砂と風という、何の変哲もない二つの要素が掛け合わさるだけで、こんな複雑な模様が出来てしまうのです! こうなると、せっかくですから「縞が出来ていく様子」を見てみたいですよね。この様子が簡単に見られる化学反応が実は知られています。それは「BZ(ベロウソフ・ジャボチンスキー)反応」という反応です。この反応がどういう反応かは、実際に動画 http://www.youtube.com/watch?v=IBa4kgXI4Cg&feature=fvwrel を見てみてください(最初1分は実験の準備です)。 縞模様が次々と生まれて、ぶつかっては消えていく様子が見られたと思います。ずっと見ていても飽きない動きで、化学部などでは人気のある実験の一つです。しかも、この反応は、動画の準備のところを見ていると分かりますが、実はたった二種類の物質を混ぜるだけというとても簡単なセットアップです。 さて、今まで見てきた熱帯魚の縞模様、砂浜の風紋、BZ反応、この三つは一見したところ全然関係なさそうですが、実は縞模様が出来る根本のメカニズムは全部同じなのです! 反応の仕組みがわかりやすいBZ反応で、共通の構造を見ていきましょう。下図はBZ反応を説明しているサイト から引用してきたものです。物質はAとBの二種類があって、色が違います。
http://www.bio.nagoya-u.ac.jp/~SugashimaMBL/harada/224_turing.htmlより引用
からくりは至ってシンプルです。最初の仕掛けは「Aがあると、ますますAが作られる」「Bがあると、Aはなかなか作られない」というものです。これによって、Aが多い場所にはますますAが多くなり、Bが多い場所はAが少なくなります。ただしこれだけだと「Aが多い場所にAがたくさんできて終わり」になってしまい、縞模様は出来ませんので、もう一つ仕掛けが必要です。 二つ目の仕掛けは「Bの方が早くいなくなってしまう(遠くに行ってしまう)」というものです。AもBも動き回るのですが、Bの方が早く動きます。そのため、さっきまでBがいた場所からはすぐにBがいなくなっており、別の場所にBが増えていたりします。一方Aはのろまなので同じ場所からなかなか動きません。 この二つの仕掛けがうまいバランスをしているとき、丁度AとBが交互に並ぶ状態が実現します。つまり縞模様が出来上がったわけです。ちなみに、今までは縞模様の話ばかりしてきましたが、二つの仕掛けが別のバランスの仕方をしているときには、例えば牛のまだら模様のようなパターンが出来ることが知られています[1]。 砂浜の風紋の場合、化学反応の場合とは少し違うのですが、Aが「砂がある状態」、Bが「砂がない状態」に対応します。砂があると、それだけ摩擦が大きいので、飛んできた砂はそこに止まりやすく、結果その場所にますます砂が集まります。逆に引っかかりがない(砂があまりない)場所に砂が集まろうとしてもなかなか難しいでしょう。しかし、砂が山のように集まっている場所は、砂がさらに集まりやすい一方、そこから飛ばされていく砂もまた多くなります。こうしたからくりで、風紋もまた縞模様になるのです。 そして、生物の皮膚の縞模様もきっと同じ仕組みだろうと考えられています。このアイデアは今から60年も前に、コンピュータ科学の分野でとても有名なチューリング という人が提唱しました[2]。そのため、先ほど述べた仕組みで作られる模様は「チューリングパターン」と呼ばれています。
「誰がチューリングを殺したのか」http://www.fbs.osaka-u.ac.jp/labs/skondo/saibokogaku/Turing.htmlより引用 「誰がチューリングを殺したのか」より引用
さて彼が初めて、生物の縞模様の仕組みとしてチューリングパターンを提唱したとき、生物の専門家からは相手にされませんでした。なぜなら、当時はどんな物質が実際の生物の縞模様を作っているかについて全然分かっていなかったからです。 しかし時代が下って1995年、タテジマキンチャクダイという魚の縞模様の変化を丹念に観察していた日本のグループが、縞の出来方はチューリングが言っていた通りだという研究を発表しました[3]。現在もさまざまなグループが「生物の縞模様」について研究しているので、その完全な構造が分かる日も近いかもしれません。 <さらに進んで勉強したい人に> 詳細な数学的メカニズムを知りたい人には、物理の講義ノートですが「パターン形成の数理」 の第3章には、ここで述べた「チューリングパターン」の数学的構造が出ているのでおススメです。   脚注 [1] 「双安定系から振動・興奮・空間パターンをつくる」 [2] A. M. Turing “The Chemical Basis of Morphogenesis” Phil. Trans. R. Soc. B 237 37 (1952) [3] S. Kondo and R. Asai “A reaction–diffusion wave on the skin of the marine angelfish Pomacanthus” Nature 376 765 (1995)

シータ 東京大学大学院総合文化研究科 博士課程3年

文化の研究はしてません。やってることは物理です!

@Perfect_Insider

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